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指しゃぶり/こぶししゃぶりはやめさせるべき?〜指しゃぶりの発達的な意味とデメリット・やめさせる時期


指しゃぶり/こぶししゃぶりはやめさせるべき?〜指しゃぶりの発達的な意味とデメリット・やめさせる時期〜

我が子は生後4週目くらいからこぶしを舐め回すようになりました!

はじめはお腹が空いている時だけでしたが、次第に空腹時以外もこぶしを口に突っ込むようにして舐めていました。

今後指が別々に動かせるようになれば、これが指しゃぶりになるのかな、、、

おもちゃが握れるようになれば、おもちゃをなめるようになるのかな、、、

小さな事ですが、出来ることが増える姿を見るのは本当に嬉しいことですね!

 

しかし、SNSをさらりと見てみると、

「指しゃぶり始めたけど、癖になっちゃったらどうしよう?」

「凄く指しゃぶりしてるけど、歯並び大丈夫かな?」

などなど、指しゃぶりの影響を心配する投稿がしばしば目につきます。

 

今回は

指しゃぶり/こぶししゃぶり はやめさせた方がいいの?

指しゃぶりのメリット/デメリット

いつまでにやめさせたらいい?

 

について調べてみました!

 

 

 

指しゃぶりの発達的な意味

 

指しゃぶりは胎児期からすでに観察され、生後原始反射として行われる一連の哺乳反射のうち吸啜機能の訓練ととらえられている。生後1,2カ月の乳児でも、口の周りに手を持ってこられるようになると、自然な行為として指をしゃぶるようにな り、その後、手と口の協調運動を促していく。また、口腔の感覚機能の発達にも寄与し、情緒的な満足感も得ているようである。乳児にとって指しゃぶりとは、生理的な、かつ発達学的に意義のある行為であり、癖ではない。・・・中略・・・乳幼児にとって吸指癖は、未熟な感情をコントロールする手段、いわゆる癒し効果を得る行為として機能している

発達期の口腔習癖への対応-吸指癖と舌突出癖- 石田雅章 口腔病学会雑誌2006 年 73 巻 2 号 p. 165-171

 

上の文章は論文からひいてきたので少し難しく書いてありますので、解説します!

 

・指しゃぶりはお腹の中にいるときから、母乳/ミルクを飲むための練習として行なっている。

・指しゃぶりは手の感覚と口の感覚を同期させ、その後手と口をうまく一緒に使っていく練習となっている。

・指しゃぶりは口の感覚を発達させる。

・指しゃぶりをすると赤ちゃんは落ち着く。満足する。感情コントロールの手段


この中の「協調運動発達」「口腔感覚発達」について、次に少し詳しく説明します。

 

 

目と手と口の協調運動

上の説明には入っていませんでしたが、指しゃぶりは目と手の協調運動を促すとも言われています。

自分の手を見つめて動きを確認しながら、口まで運ぶ。口から入ってくる感覚と、手からの感覚と、目で見ている感覚を一致させていく。

指しゃぶりでこのような感覚を経験していくことで、自身のボディイメージを作り、

・見ているものに手を伸ばす

・掴んだものを口に運ぶ

などの動きの土台を作っていきます。

 

物が掴めるようになると、赤ちゃんはなめることにより物の形や材質を感じ取っていきます。外の世界の探究の始まりが、物をもって舐めることになります。

 

口への感覚入力→原始反射を減弱させる

生後1,2ヶ月の赤ちゃんには、母乳/ミルクを飲むための反射的な動きがあります。この反射的な動きは、母乳やミルクことに特化しており、その後離乳食を食べていくためには邪魔になってしまいます。

離乳食スタートの目安には「口の中に入れたものを押し出さない」とありますが、これは反射的な動きがまだ残っていることを示します。

 

この反射的な動きを弱めていくには、口の中や口の周りにたくさん刺激が加わることが大切とされています。

指しゃぶりは、口にたくさん感覚をいれることに繋がり、離乳食にむけ反射的な動きを消していくことに役立っています。

 

実際に、脳性麻痺などで指しゃぶりが困難なお子さんは、反射的な動きが長く残ってしまったり、顔や口の感覚過敏が強く出てしまったりします。

 

 

指しゃぶりのデメリット

しゃぶる指の種類やしゃぶり方にもよるが、指しゃぶりを続けるほど歯並びや噛み合わせに 影響が出てくる。指しゃぶりによる咬合の異常として次のものが挙げられる。

1上顎前突:上の前歯が前方にでる(写真1)

2開咬:上下の前歯の間に隙間があく(写真2)

3片側性交叉咬合:上下の奥歯が横にずれて中心があわない(写真3、4)

このような咬合の異常により舌癖、口呼吸、構音障害が起りやすい。指しゃぶりにより上下 の歯の間に隙間があいてくると、その隙間に舌 を押し込んだり、飲み込むときに舌で歯を強く 押し出すような癖が出やすくなる。このような癖を「舌癖」という。舌癖のある児は話をする ときに前歯の隙間に舌が入るため、サ行、タ行,、ナ行、ラ行などが舌足らずな発音となることがある。 前歯が突出してくると、口唇を閉じ難くなり、いつも口を開けている癖がつき、鼻や咽の病気がないのに口呼吸しやすくなる。

指しゃぶりについての考え方 小児科と小児歯科の保健検討委員会

ここに挙げられている指しゃぶりのデメリットは

・歯並びが悪くなる。出っ歯。噛み合わせの異常

・口呼吸

・舌足らず、不明瞭な発音

 

の3つですが、まず歯並びや噛み合わせの異常が出ることにより、口呼吸や発音の異常に繋がっていきます。

このような悪影響が生じるのは、長期間続く頑固な指しゃぶり

であり、後で書いているように3歳頃までの指しゃぶりではこのような影響に神経質になる必要はありません。

 

歯並びの異常から出っ歯や口呼吸がはじまる

指しゃぶりはとても強い力で指を吸っています。

その圧力の影響で、上の写真のように歯列が舌側に傾いてしまったり、上顎歯列が写真4のように狭くなってしまったりします。

また、写真1、2のように前歯が唇側に傾斜してしまう(出っ歯)と、唇を閉じるのが難しくなり口呼吸になりやすくなります。

 

出っ歯になり、上下の歯列間に隙間が空いてしまうと、その隙間から舌を出すような癖がついてしまうことがあります。

何もしていない時も舌が歯の間にあったり、飲み込む時もその位置に舌があると、常に舌が歯を押す形となり、歯が唇側へますます傾斜していってしまいます。

歯は舌から押される力と、頬・唇から押される力が釣り合うことで、まっすぐ生えていることができます。

そのため、【口呼吸で口の力がかからない+舌が正しい位置になく歯を押している】状態は、出っ歯を加速させていくことになります。

 

このように、まず歯並びの異常が出るところから、次々と他の症状が加わっています。

発音の異常

舌が常時歯の間に位置していると、そこから発音の異常に繋がることがあります。

サ行、ザ行、タ行、ダ行、ナ行、ラ行は、舌の先を上の歯の付け根あたりにつけて発音をしています。

しかし、常時歯の間(低い位置)に舌があると、発音するさいにうまく舌を正しい位置に持っていくことができなきなってしまっていることがあります。

そうすると、正しい位置で発音できずに音が不明瞭だったり、舌足らずに聞こえてしまうことになります。発音についてはまた他の記事で詳しくまとめたいと思います。

指しゃぶりはいつまでOK?いつやめるべき?

乳児期:生後12ヶ月までの指しゃぶりは乳児発達過程における生得的な行為なので、そのまま経過をみてよい。   

幼児期前半(1、2歳):この時期は遊びが広がるので、昼間の指しゃぶりは減少する。退屈な時や眠い時に見られるにすぎない。したがって、この時期はあまり神経質にならずに子どもの生活全体を温かく見守る。ただし、親が指しゃぶりを非常に気にしている、一日中頻繁にしている、吸い方が強いために指ダコができている場合は4~5歳になって習慣化しないために親子に対して小児科医や小児歯科医、臨床心理士などによる対応が必要である。  

幼児期後半(3歳から就学まで): この時期になるとすでに習慣化した指しゃぶりでも、保育園、幼稚園で子ども同志の遊びなど社会性が発達するにつれて自然に減少することが多い。しかし、なお頻繁な指しゃぶりが続く場合は小児科医、小児歯科医、および臨床心理士による積極的な対応が必要である。   

小学校入学後:この時期になると指しゃぶりはほとんど消失する。この時期になっても固執している子、あるいは止めたくても止められない子の場合は、 小児科医、小児歯科医、および臨床心理士の連携による積極的対応を行う。

 

指しゃぶりについての考え方 小児科と小児歯科の保健検討委員会

この資料では、

【3歳頃までの指しゃぶりは特に禁止されるべきものではないことを保護者に話すようにすることが大切】
との文言がありました。

3歳頃までの指しゃぶりは発達的に必要な行動であったり、自分の感情をコントロールするために必要な行為であるとされ、無理に禁止してしまうと情緒が不安定になり落ち着かなくなったりと、心理的な反動が起こるリスクがあるとされています。

 

4、5歳になっても頻繁に指しゃぶりが続く場合は、指しゃぶりによる悪影響が懸念されるため、小児科/小児歯科に相談にいくことが勧められています。

 

指しゃぶりをやめさせるには?

先程述べたように、指しゃぶりを無理やりやめさせようとすると心理的な反動(気持ちが不安定になる、落ち着きがなくなる、など)が起こるリスクがあります。

 

では、指しゃぶりをやめさせるためぬ、どのような関わりが勧められているのでしょうか?

前掲した論文では

・おもちゃや遊びなど、両手を使う機会を増やす

・外遊び、運動などでエネルギーを発散させる

・寝ている時に手を繋ぐ

・おやつをあげる等、手と口を使う機会を増やす

・絵本を読むなど、集中する時間を増やす

・下の子が生まれた、入園など環境が変わった、等心理的な問題が考えられる場合は、スキンシップを増やす、関わりを増やす

 

などの対応があげられていました。

 

指しゃぶりをするには、手を口にいれる必要があります。

両手を使っていたり、口に何か入っていれば、指しゃぶりをすること自体ができなくなります。

また、遊びや本に意識が向いている間は、指しゃぶりを思い出さずにいられる可能性が高いです。

 

怒ったり、指にカラシをぬったりする前に、このような環境調整で【指しゃぶりができない時間を増やしていく】ことが勧められています。

 

まとめ

・3歳頃までに指しゃぶりは気にしなくてOK!

・4、5歳まで続く頑固な指しゃぶりは小児科や小児歯科に相談する。無理やめさせると心理的に不安定になるリスクあり!

・頑固な指しゃぶりは歯並びが悪くなる、口呼吸、不明瞭な発音などを引き起こす。

・指しゃぶりをやめさせるには、まずは【指しゃぶりできない】時間を増やす!